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予備選考委員の感想


橋本 克己さん(特定非営利活動法人彩星学舎)

送られてきた50団体の申請書を手にとって見て、大変なことに参加してしまったなぁ〜と思ったのが最初でした。予備選考の締切は特定非営利活動法人彩星学舎ビックイベント8月31日演劇公演に向けての時期と重なっており、正直引き受けなければ良かったと何度も何度も頭を抱えていましたが、50団体の思いと向き合う決心をして取り掛かりました。
私が活動している特定非営利活動法人彩星学舎は、1999年4月に埼玉県さいたま市に開校したフリースクールです。不登校や心のつまずき、学習障害や多動傾向・軽度の知的障害など福祉と教育の狭間に置かれ充分なサービスを受けられず、理解と支援が必要な児童・生徒に学びを保障しようという理念を掲げ活動を展開しております。そして大切なビジョンがもう一つ、性別・年齢・地位・名誉によらない協働によるコミュニケーションの実現=「学びのコミュニティ」を目指し様々なイベントを行なっております。そのイベントの柱の一つとして夏季特別講座「演劇公演」があります。彩星学舎在籍児童・生徒、スタッフ、在籍児童・生徒保護者、ボランティアスタッフ、地域、関連機関を巻き込み、埼玉全域・東京・千葉・栃木など関東一円から200名近い観劇者を合わせ約300名規模のイベントとして毎年規模を拡大しながら実施してまいりました。彩星学舎は人・金・モノに余裕があるわけではありません。いかに知恵を使って実施することができるのか、毎回スタッフが頭を抱えながら実施しておりました。今回私自身行き詰まっていた部分があり、正直今まで経験したことを行なうだけで、新しい積み重ねは期待できないだろうと思いながら実施に向けて準備を行なっていました。自分の中の予定調和された中での活動は新鮮さがなく、活動に対しての意欲も高まらず、正直イベントの中止すら考えたほどでした。ただイベントを行なうだけではスタッフだけではなくそこに集う人たちにとっても発見・気付き・刺激のない・混沌がないだろう。ただやる…だけでは仕掛けとしては不十分ではないか〜彩星学舎のミッションは何なのか〜何がしたいのか〜もう一度原点に戻ることが大切ではないかと考えていました。
そんな時に届いたコミュニティケア資金助成プログラムの選考予備選考50団体の申請書類に目を通してみると、自分にとって多くの発見・気付き・刺激があり、混沌が起きました。こんな活動をしている団体があるのか〜こういう着眼点があるのか〜ドキドキ・ワクワクするプロジェクトではないか〜これはどういう意味を持つ活動なんだろうか〜など50枚の申請書類は新しい刺激を私自身に与えてくれたのです。
他の団体が作成した申請書類をこのような形でじっくり読むのは、初めての経験だったのですが非常に興味深かったです。前述しましたが彩星学舎でも人・金・モノに余裕があるわけではなく常に慌ただしい中で活動をしております。そんな余裕のない状況は申請書類からも感じ取ることができましたが、貧乏自慢や不幸自慢についつい目を奪われがちな自分に傾向に気付き、すべて見直しました。プロジェクトを実施する為に…というコムケアの趣旨をしっかり捉えているかどうかを見てみると様々なポイントが見えてきました。

@ビジョナリー経営の徹底
ちょっと古い言葉かもしれませんが、ビジョナリー経営とは何か。自社の企業理念や経営哲学に基づいて経営を行なうことです。言い換えれば、すべての経営活動を企業理念や経営哲学から展開していくことです。何を言っているんだ〜自分たちはNPOだ、市民活動団体だ、と言われるかもしれません。しかし人が集い、お金が動き、モノが必要となれば大小関係なく経営という感覚は必要不可欠です。ここの部分は絶対外してはいけない部分でしょう。そんなことは分かっているが、そんなことをやっていては潰れてしまう〜もっと具体的な改革を推進すべきだとおっしゃる代表の方は多いと思います。もちろん具体的な改革は必要ですが、それをどんな方向で進めていくのか、あるいは何を基準に進めていくのかが明確でなければ、それは小手先だけの効果のないものになってしまいます。つまりビジョナリー経営とは、大変混沌としている社会状況の中で、遭難することなく航海していくために、「羅針盤」をもった経営を行なっていくことです。その「羅針盤」こそが、各NPO、市民団体の経営理念、哲学、ビジョンなのです。船乗りなら誰でも「羅針盤」のない船に乗りたくはないのと同様に、目的地や進むべき方向が不明確な組織には、誰も在籍したくありません。
ただ単なる数値目標や達成値を「羅針盤」ととらえない視点が大切です。思いだけが先行してしまい、五里霧中の状態が続けば努力は疲労感に変わりより悪化した悲惨な結果がそこにあるかもしれません。「あるべき姿」と「現状」を明確化するときに「羅針盤」を使い、思いのパワーをどこに向けていくのか〜この徹底をしている企業(例:TDLが有名)はそこに集う人たちがはっきりとした目標を持ち活動しています。
思いは充分伝わってきました。しかしこの部分をポイントとした時にどこに進んでいくんだろうという船を沢山感じました。明確な「羅針盤」を後押しする資金援助なのかどうかをじっくり考える機会となりました。
 
Aビジュアライズ化
 実際に50団体の申請書類を見たときに、「羅針盤」がしっかりあるNPO・市民団体はありました。非常に参考になるところがあり勉強になりました。では「羅針盤」をみんなに伝える為の方法〜プロジェクト〜はどうかというと、物足りなさを感じました。限られたスペースに「羅針盤」を表現し、どの方向に進んでいくのか、そのために何をするのか、何が必要なのか、何が問題でそのための対応策はどう考えているのか等記入していくのは確かに難しいことかもしれませんが、ここに書かないと伝わらない事を痛感しました。このスペースを通して記入した内容が読み手の頭の中で映像化される(ビジュアライズ化)表現方法を学んでいくことがいかに大切か感じました。プロジェクトを進めていくときに誰に読んでもらいたくて、誰は読まなくてもいい何ていう事はないと思います。社会へ向けて発信していく方法を学んでいく重要性を改めて捉え直していただきたいと思いました。

では偉そうに書いていて自分はどうかというとまだまだ未熟で、勉強していかなければなりません。今回申請書類を見る立場に廻り、自分の団体を客観的に見ることができました。今まで述べてきたようなことは散々いろいろな所で教えていただいたことでしたが、あまり実感できなかった事でもあります。このような機会を与えていただき50団体の申請書類を見る過程の中で私自身学ばせていただきました。本当にありがとうございました。次回は申請書類を書く方に廻りたいと思います。大変遅くなり申し訳ございませんでした。
今後ともご指導ご鞭撻の程よろしくお願いいたします。

8月31日演劇公演は、スタッフ間でもう一度ミッションをアライメントし、取り組みました。予定していた以上の効果を得られました。ひとつステージが上がった印象があります。このままスパイラルで活動の幅・質を向上しつづけていきたいと思います。ご協力ありがとうございました。


坂谷 信雄さん(東京都職員研修所 調整課企画担当係長)

今年度、初めて予備選考に参加させていただきました坂谷(さかたに)信雄です。現在、東京都庁職員として、都職員の研修機関(東京都職員研修所)に勤務しています。
(予備選考後の感想)
申し込まれた方々は、色々な意味で、「自由」な人々だということです。
 ただ、その意味は、前まで、自分自身が考えていた「自由」の概念とは随分違います。 都会は、周囲の眼を気にすることなく、煩わしい近隣関係なしで生活できます。それを、私は「都会ゆえの自由の魅力」と考えていました。
 煩わしい近所や周囲の眼を気にして生活することが、日本人の独立心を奪い、集団にとけ込まなければ疎外される恐怖を与える。近所や親戚の子が有名大学にはいれば、比較され、自分が本当に何をしたいのかわからないまま、受験・就職・結婚・そして、家を買いささやかな出世に悪戦苦闘する。
 「こうした不自由さ」は、日本人が「個」として自立してゆくには、制約要素だとおもっていました。それが干渉されない大都市での生活は、「自由」。ムラ的社会の「不自由」に対するアンチテーゼとして、まさに「フリーター」という生き方を選ぶ人々が増えた背景とも思います。
 しかし、「自由」には、二種類あります。「束縛からの自由」と、「自己実現に挑戦する自由」です。「束縛からの自由」これも大切ですし、今もこれがないために、世界中で多くの人が苦しんでいる実態は無視できません。でも、「束縛からの自由」が、単に「束縛されない」だけを意味するのでは、「空っぽの自由」です。「自分自身が何を望んでいるのわからない」のに、「自己実現実現の自由」を享受できるはずはありません。また、「目標」があっても、それが「人と比較して自分の優位であることを示すための富・学歴・社会的地位・名誉」が目標であるなら、その人は自由どころか、社会的しがらみの虜となっていると言えます。
 今回の予備選考を通じ、日々、生まれている社会問題に自らの使命を見つけだし、挑戦しようとする意欲的な人々が世代を問わず増えていることを学びました。こうした人々こそ、これから数多くでてくるであろう「自己実現できる自由」の体現者であり、これからの社会の「先駆者」となる人たちだと思います。
 先駆者の宿命として、様々な試行錯誤があり、困難、失敗も多々あることと存じます。末筆ながら選考の結果の可否に関わらず、応募された方の今後のご活躍をお祈り申し上げます。


瀬谷 重信さん(潟Rラボレーション経営研究所 代表取締役)

北海道から九州まで広く寄せられた予備選考の50件の助成プロジェクトを担当しました。企画者の熱意を感じながら、最終選考候補として特に推薦、推薦、検討、見合わせの4レベルに評価することは時間以上に悩み、苦しみ、選考の難しさを心身ともに感じたプロセスでした。プロジェクトの内容が高齢者、障害者、子供を対象にした支援の企画から、新たなビジネスやコミュニティを創りあげようとする企画、更には新たな社会の仕組みつくりに挑戦しようとしている意欲的なテーマにいたる広範、多様なもので、選考の難しさとともにNPOの意識と行動の高さを強く感じました。
これらの選考過程から今後のNPOのあり様についての2つの想いに至りました。
応募から最終選考にいたるプロセスは助成金を得ることが当面の目的でしょう。しかし、その本質は「成長のための学習のプロセス」であるとの考えが大切であるとの想いです。自分達の組織や活動の意義を再評価しそのもとでのプロジェクトの目標、実現時期、達成方法、資金計画などの実施計画とプロジェクトの推進管理の仕組みがしっかりしてこそ、プロジェクトは実績をあげそしてNPOは成長していく。このようなプロセスで創りあげられた企画は社会性、先進性、発展性の面で説得力を持ち評価を得ています。NPOは志や問題意識は極めて高いのですが、プロジェクトを企画実行するうえで人材、ノウハウを単独でカバーすることは困難であります。この面でのアドバイザーとしてのコムケアセンターの役割は大きくなっていくことでしょう。
第2の想いは「コラボレーション(協創)による企画、実践」の重要性です。
今回の企画でも障害者と健常者、若者との組合せによるアイデア、他の組織との連携による実施など異質な交わりによるプロジェクトがいくつもありました。もはや自分達単独でことをなすには知恵、時間、資金など限界です。目標を共有し、"3人寄れば文殊の知恵"のとおり、それぞれが持っているノウハウ、技術、などのコアコンピタンスを活かしあう
コラボレーション志向のプロジェクトが企画、実践の両面で求められます。そのためにはNPOそれぞれが自分達の特色、得意分野、ノウハウなどコアコンピタンスを持つことが必須となります。


藤澤 浩子さん(よこすかパートナーシップサポーターズ)

50件の申請書の中から規定どおりの件数で選定せねばならないというのは、やはりとても大変な作業でした。けれども、一度に50の申請書を拝見すると、いろいろ気づかされることがありました。例えば、すぐれたキャッチコピーや、シンプルな主張、読みやすく整理された書式は、多くの申請書を限られた時間で読んでいく選考担当者にとってはとても有効に作用すること、反対に優れた専門性、溢れるやる気だけでは一歩足りないこと、などです。
事務局より提示された5つの評価基準に基づいて選考しましたが、基本的には、コムケア「大きな福祉」−地域福祉に寄与すること、具体的な行動・実践活動か、それにつながる取り組みであることを重視しました。まとまった金額を申請しやすいため、機材購入中心の申請が多くありましたが、実践活動のために必要かどうかで選定しました。一方、学習会、セミナー、シンポジウム開催費用として、主に講師招聘・謝金として資金の大半を支出する計画が多数ありました。実践活動との関連をよく見て判断する必要はあろうかと思いますが、学習活動は基本的には受益者負担とすべきであるという立場で選定しました。実践活動の評価件数が少なければ、学習活動にも枠が残されたかもしれませんが、実際のところ、その枠は残りませんでした。
一度に多くの申請書を目にしてみて、評価基準以外に人の心を惹く説得力のある記述というものがあるということを実感しました。申請書の書き方ノウハウなどで伝えられるようなものではなく、やはり日頃の実践の積み重ねが反映されるのだろうと思います。コンテクスト:文脈こそがすべて、という感じでしょうか。大変勉強になり、良い機会を与えていただいたことに深く感謝いたしております。


下山 浩一さん(コミュニティアート・ふなばし 代表)

今回の予備審査に当たって最も重視したことは「コムケアで助成するべき事業か」という点である。コムケアが掲げる「大きな福祉」というコンセプトに合致するか、という点はもとより、助成が「本来届くべき対象」に届くように配慮した。
具体的には、
・ 規模が小さい団体、活動歴が浅い団体を優先的に検討した。
・ ホームレス支援、セクシャリティ、在日コリア人支援等、支援に関して社会的なコンセンサスが確立しているとは言えない分野の事業は優先度を高めた。
・ 環境、福祉(特に介護一般)、スポーツ、レクリエーション等、助成制度が社会的に確立している分野の事業は、優先度を低くした。
・ 活動歴が長い団体、規模が大きい団体、企業の支援によって活動している団体、NPO中間支援組織の優先度は低くした。「先輩」市民セクターとして、資金調達に工夫をしていただきたい。
・ 助成金申請理由が単にPCをはじめとする機器の取得になっているものは推薦対象から除外した。
総じて、首都圏以外の応募が多く、市民活動の広がりがビビッドに伝わってくる選考となった。が、同時に、「審査員」が要求される「市民活動に関する知見」は非常に高度になっており、責任を感じた。


長沢 恵美子さん(経団連1%クラブ事務局)

どの申請書からも、コミュニティの課題を解決するために、自分たちが立ち上がろうとする情熱が伝わってきました。こうした一人ひとりの市民の動きが日本を変えていくことができるのだと、心強く思いました。コミュニティの中で、さまざまな人が集まれる場を求めているものが多かったという印象があります。場の持つ求心力は、コミュニティケアにおいて大切な要素なのかもしれません。かなり迷いましたが、最終的には、新しいコミュニティケアのシステムを提案しているプロジェクトに高い点をつけました。できるだけ、コムケアの多くの仲間が共創する際の参考になると思うものを選んだつもりですが、そうなっているかどうか・・・。


小山 美代さん(公立研究所)

我が国は、中央集権国家から自立分散協調型のネットワーク社会へと意向しつつあるが、その方向感を支えるひとつが、コミュ二ティケアの活動支援であると思う。昨年の提案に比べて、一段と内容が充実してきている。特に、NPO法人からの申請が増加しており、我が国でNPO法人が着実に根をおろしていると実感した。地域密着型のNPO法人の活動は、まちづくりだけでなく地域全体にも新しい活力を吹き込むように思え、コミュニティケア活動支援はNPO法人の芽を育てるために、重要な役割を担っている。
ところで、「高齢社会」と「少子化」は背中合わせというが、国の施策や社会の関心事はともすれば、「高齢社会」に目が向いているのが現実である。
今年も「子育て支援」をテーマにしたユニークなものが多く、感度のよいコムケア仲間からの提案を心強く感じた。私たちは、日本の未来を背負う子どもたちを、社会全体で健やかに育て見守ることを忘れてはならない。


大川 新人さん(NPOマネジメントコンサルタント)

(よかった点)
 商店街との連携を企画しているプロジェクトがあって、よかったです。NPOはテーマ型が多く、地縁型の団体と連携するケースが少ないからです。
 個別では、WAPのホスピタルアートプロジェクトの目新しさが、印象的でした(最終選考会で上位15団体に選ばれました)。
(よくなかった点)
 多くの申請書は、新鮮味が乏しかったです。先駆性のある、斬新なアイデアを持ったプロジェクトが少なかったことが、残念でした。想像力をふくらませて、社会や地域に必要な、いままでにない、新しい発想のプロジェクトに挑戦してもらいたいと思います。


飯沼 勇一さん(潟Aドエンジニアーズ)

予備審査を引き受けては見たものの、こんなに辛いとは思わなかった。というのが率直な感想だ。勿論読み込むことも大変だったが、何よりも「審査をする」という行為自体が厳しかった。
大部分の申請書類にはそれぞれの団体の情熱が溢れており、場合によっては小人数ではあるが活動への本当の理解を訴えるものもあった。
一通り下読みをした後、審査の目が揺らぐのを感じた。自分の中の審査軸が一定していないのだと思い、軸を揺らがせないために最終判断を一日で行うことに決めた。
もう一つ決めたことがある。「大きな福祉」の視点を決して失わない態度を自分自身に言い聞かせることだ。それが今回の最も重要課題だと判断した。
できればどの申請書類にも支援したい。そうした思い入れはできるだけ排除し、純粋に「大きな福祉」という視点で判断したつもりである。
それにしても、事業型NPOを視野に入れている団体が増えてきたのには目を見張った。新しい社会モデルの創出をめざしているものもあった。
溢れる情熱に頭が下がる思いと同時に、日本も捨てたものではないと実感した次第である。


渕野 康一さん(東レ経営研究所) 1.気遣い合う社会づくり、支えあう関係づくりの現場を見たくて、会場に足を踏み入れた。少し遅刻したら満席で熱気ムンムン。辛うじて空いた席を確保。それほど200人以上の人が聴き入っているのにまず驚く。
2.予選を突破した30の市民活動グループの発表はどれも個性があり、熱意があり、感動があった。甲乙つけ難く、5つに厳選するのは至難の業。気軽に審査員を引き受けたのを一瞬後悔した。
3.でも、公開でかつ参加者が選ぶ方式は公明正大で素晴らしい。気を取り直して?できるだけ異なる分野から感動のより大きかった活動をひとつずつ選んだ。
4.審査後の交流会ではみんな元気でいい笑顔をしていた。こういう人たちが各地域をそして日本を変えていくんだなあと実感した。なにか救われた温かい気持ちが会場内に充満していた。これこそ愛情、慈愛に満ちた雰囲気かも。
5.参加してよかったと思う。後味のいい映画を見た後のようなさわやかな充実感が残った。おかげさまで、私の教育ビジネスの原点を省みるヒントをお土産としてたくさんいただいた。参加の機会と元気を与えていただき感謝、感謝。


井上 英之さん(ソーシャルベンチャーパートナーズ・東京ベイ)

今年は、選考に参加させて頂きまして、ありがとうございました。
私は、「スタイル」という社会ビジネスや事業型NPO向けのビジネスプランコンテストを開催していたのもあって、少し多く約70件ほど拝見させていただきました。
(http://www.etic.or.jp/style2003)。
審査側というとなんだか偉そうですが、やはり、こういうプランを見ているとものすごく勉強になりますし、常に審査する側が問われる部分があるので、一つひとつ真剣に読ませていただきました。
下記は、感想です。

1)全体: 
コムケアは、スタートアップ支援です。実績がない団体でも、その思いやプランの切り口しだいで、助成が受けられます。ぼくはここがすごく大事だとおもっていますが、今年は既存の組織の新規事業が多かったようですね(ちょっと残念です)。
印象的だったのは、さまざまな現場を抱えた方の熱心なプランと出会えたことです。特に、特定地域の課題を抱えている、危機感の高いもの。また、対象としている顧客が明確で、さらに問題解決の手法が具体的で革新的なもの。そういう切迫感の高いプランは、絶対に落としてはいけない!と感じました。素敵でした。
一方で、実際には一生懸命に活動されていると思うのですが、文面からは、問題発見もあいまいで、切迫感も、具体的な行動計画も見えてこないプランも多々ありました。やはり、こういう非営利の活動は、社会や周りのひとに「伝えていく」という部分が、ものすごく大事だとおもいます。その点で、もったいない!とおもうプランがいくつもありました。
全体としては、こうしてたくさんの活動をしているグループが集まると、それぞれ違う「窓」から社会にアプローチしていますが、そこから見える社会の姿には、本質的に同じ課題や問題点があり、同時に良さもあるんだなあ、とつくづく思いました。これがコムケア活動の、「大きな福祉」につながっているんですね。
以下は、「もったいない!」と思ったプランに共通していたことをいくつかあげてみます(ちょっと偉そうですが、、、)。

2)問題発見について: 〜なぜ、これが問題なのか?
基本的にこうした活動は、問題解決型のはずです。
どんな問題を、地域や社会に生きる個人として発見して、それがどんなに必要なことなのかを、手短に伝えるのが今回求められたことだったと思います。
福祉系に多かったのですが、なぜ、それが問題なのかにきちんと触れず、分野外の人には分かりにくいものが多かったように思います。
今回の短いスペースで伝えるのは大変なことですが、逆にこれができれば活動の展開が変わるはず。現場も物凄く大事ですが、現場のためにも、言語化の努力も大事なのではと思いました。

3)共感性について: 〜「私」の視点を「我々」に
ほぼ同じことですが、読み手の立場にもっと立ってほしいプランがいくつもありました(最終のプレゼンはどこも素晴らしかったです)。
「私」の視点をより多くの「我々」の視点にまで広げる伝え方、共感性を意識して欲しい。逆に、よいプランは、読んでいてこちらが意義を感じてしまって、巻き込まれそうでした!手伝いたくなってしまう。

4)WHY ME?WHY YOU? 〜お見合いです
少し驚いたのは、「なぜコムケアなのか」について語ったプランがあまり多くなかったことです。コムケア側もなるべく趣旨や思いに沿った、共感する団体に出したいはず。これはお見合いです。
「なぜ、自分たちを支援すべきか」に加え、「なぜ、コムケアから欲しいのか」を明確に示している団体はやはり、1次の審査を通りやすかったように思います。

5)投資の視点 〜活動はミッションを本当に達成するのか?
最後に、これも助成をする側(最終審査のお客さんも含みます)からすれば、社会に対する投資です。限られたお金をどう配分して、よりより効果を生み出すか、みんなで考えます。
ただお金が欲しい、というトーンしか見えないプランはやはり通りにくいと思います。特に、コムケアの助成は、一年だけのもの。この助成をテイクオフ(離陸)のきっかけにして、持続可能な活動へ発展させていくビジョンや戦略が見えれば圧倒的に有利です。ただ「欲しい」というだけでなく、具体的なプロセスや成果を見せる工夫があればと思いました。
・・・これを永久に続けるのか?それとも、まずはこれから始めて、1年後、3年後にはどういう展開をして、そもそものミッションを達成するのか?使い切ってしまうだけではない、証拠を出来る限りみせてほしい。
そういう意味で、活動のコンテンツ(内容)を語っていても、コンテクスト(物語)を見せてくれているプランは多くなかったように感じました。

お金を出そうとする人、一緒に汗を流してくれようとする人。
こういうステークホルダーも大事な顧客ですから、やはりコミュニケーションは、「大きな福祉」を前提にした非営利活動には、どうしても欠かせない能力なんですね。今回の審査を通じて、強く実感したことです。最後に、最終プレゼンは、本当にみなさん素敵でした。どうもありがとうございました。


橋本 典之(コムケアスタッフ)

私にとってコムケアにスタッフとして関わらせてもらって初めての資金助成プログラムでした。そして無謀にも163の全プロジェクトを読ませて頂くことになりました。今思えば、昨年の最終選考会では参加者として29団体のうち、5つを選ぶことでさえ、頭を抱えていた自分がいたのを忘れていました。
枚数でいえば、団体概要とプロジェクト計画書の2枚だけなのですが、そこから伝わる思いというのはそれ以上の重みがあります。そのため何度も何度も読み返す必要がありました。評価基準を基に評価をしていきましたが、読むにつれて迷ってしまいます。プロジェクト同士を比較すると基準さえ揺らぎました。
そこで、私は1日に見るプロジェクトの数を減らし、一つ一つ時間をかけて読むことにし、できるだけ2枚の申請書以外の資料(HPなど)にも目を通すようにしました。それでも読み返したら評価は変わっているかもしれません。大変、難しく、終わった時はどっと力が抜けました。
プロジェクトは、コムケアの特徴である「大きな福祉」を表すように様々なジャンルのものが集まりました。私は、介護の分野に興味があるので、そちらについ目がいってしまうのですが、芸術・文化、環境などのプロジェクトを見ることで視野も広がりますし、「なるほどなぁ〜」と評価を忘れて読んでいたことも多々ありました。そういう意味でとても勉強になりました。
ただ評価をする際、気になったのは、プロジェクトの内容の中で単発型のイベントが多かったことです。私は、素晴らしい活動は継続してやるからこそ意味があると思うので、今回助成を受けたとしても、来年はお金がないから出来ないでは支援にならないと思いました。もちろん多くの団体が継続を前提に考えていると思いますが、それが書いていないことが多く、伝わってきませんでした。
コムケアは、助成するだけでなくその後の関係やネットワークをつくることを大切にしている団体なので、そこを踏まえたプロジェクトがもっと出てきて欲しかったです。そして、それは実は、助成を受けた、受けないに関わらずできることです。コムケアは助成先団体とのみネットワークをつくっているわけではないので、積極的に参加して頂けるといいと思います。私もその一人です。ネットワークの必要性を感じているが、忙しすぎて余裕がないという団体が多いと思いますが、一度でもそれに触れてみると、その虜になると思います。そこが、ただの助成プログラムではない『コムケア活動支援プログラム』です。最終選考会に参加して頂いた方は、それを感じて頂けたのではないでしょうか。
最後に、申請をして頂いた163団体に感謝します。評価することは大変でしたが、その後も申請書を読みながらパワーをもらっています。ありがとうございました。