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■予備選考委員の感想

 

[予備選考委員感想]

松清智洋 (名戸ヶ谷ビオトープを育てる会)

 予備選考に参加して、さまざまな市民活動の裾野の広がりを感じていると共に、自分自身の活動を今一度客観的に見直す必要があると感じました。社会性の高い活動は、どれだけ多くの共感を得ることができるかが、その事業を評価する上で重要なバロメータとなります。もちろんそれが絶対的な評価ではありませんが、その事業の今後の展開を考える上では重要なポイントになります。共感を得るためにはその事業がより社会的に意義のあるものであることはもちろんのこと、PRする技術も少なからず必要になります。もちろんあまりテクニックに走っても、うわべだけのつまらないモノになってしまいますが、逆に個人的な思い入れ、気持ちだけでも難しいと思います。
 選考する側の立場に立つと、どうしてもそのような部分が目についてしまいます。惜しいと思う多くの事業は、その事業プログラムそのものもそうですが、申請書の内容がどれだけ多くの人の目を通っているか?という点で疑問があることです。事業そのものについてはその人(たち)の強い思い入れがあるし、第三者的な立場の否定的な意見には反発もあるかもしれません。それらすべてを受け入れろとは言いませんが、それはその事業のある面での限界であることも認識すべきです。申請書についても同様です。少なくとも第三者の評価を受けるための書類は事前により多くの人の目を通ったものの方がよいと思います。より練った文章は読み手にそれが伝わるものです。
 コムケアの助成プログラムは助成金そのものが実は重要ではなく、このプログラムによって、多くのさまざまな人の結びつきを築き上げていくことが目的であることを佐藤修氏は常々強調されているが、そういう意味では、選考に際してはその事業のもっと本質的な部分を評価し、将来性を見極めることを選考側に求めていると思います。実はそれが非常に難しく、そのために予備選考により多くの人の目を通すシステムになっているものと思いますが、多くの目で評価すればするほど、助成の目的をきちんと咀嚼しているとは思えない、最低限の表現力を伴っていない申請書は、その活動団体の事業遂行力を疑うことにもなり、高い評価を得ることは難しいと思いました。


横尾徹也 (UDくまもと補助犬サポーター)

 昨年に引き続き、予備選考を担当させていただきました。申請書を読ませていただくと、申請者の皆さまが地域をより良くするために、知恵を絞り、多種多様な活動を行われていることが感じられ、たいへんに勇気づけられました。
 「大きな福祉」の実現に必要不可欠なポイントのひとつが、「相手の立場に立って考える」ことだと考えています。今回の申請者の方々も、対象とされている方々の立場に立って日々の活動されていると思いますが、相手の立場に立つことは本当に難しいことで、よく観察し想像を働かせるだけでなく、何を考えているか、何を欲しているかについて五感を総動員して考え抜くことが必要です。しかし、それをしないと単なる自己満足に終わりそうな気がします。
 申請書の記載についても同じことが言えます。各々の申請プロジェクトについては決して専門家では無い選考委員に対して、独りよがりにならず、分かりやすく、プロジェクトの必要性を説明することは難しいことですが、それをしないと素晴らしい皆さまの活動が選考委員に理解されません。提出の前に選考委員の立場に立ってもう一度見直されることをお勧めします。
 最後に、今回も選考を通してたいへん勉強させていただきました。機会を与えてくれた皆さまに感謝の意を表して感想とさせていただきます。


橋本克己 (特定非営利活動法人彩星学舎)

 先日親戚の中学校の運動会に行く機会がありました。栃木の県南地区、ベットタウンが高齢化し、少子化が顕著に表れている地区です。運動会の入口でテント販売をしている団体があり、焼きそばや赤飯、飲物や和菓子等お手頃な価格で販売していました。その団体は障害児・者の社会参加を進めているNPO法人でした。こんな身近な所で活動を行なっている事の驚きと喜びで一品多く購入してしまいました。地域と交流する機会を上手く利用している点に興味を持ちましたが、制約がありPR活動は行なっていませんでした。
 NPOが全国的に増加傾向と言っても各都道府県・地域によっても状況は違うようです。あの申請書に書かれていない様々な想い、背景の存在を改めて実感しました。他者へ伝えていく努力は必要だと思っていますが、表面的な部分だけではなくより本質を探っていく視点も必要だと思いました。色々な事が学べる機会として今後も参加したいと思っております。


佐藤祐子 (我孫子市ボランティア・市民活動サポートセンター)

 この度、私の所属する会もささやかな基金を作りました。いざ、助成金を出すとなると審査方法など問われ、戸惑い大変でした。それで、学ばせていただこうと予備選考委員に応募しました。いざ30件の選考となると、評価基準や目安などあるものの、各々の内容があまりにも違い、思いや規模・ニーズなど2枚のペーパーのみを手がかりにするには、とても難しいことでした。また、書き方次第で理解や伝わり方が違い、難航しました。申請者にとっては、「助成金獲得策略講座」など、あると嬉しいですよね。
 そこで、ホームページなども読ませていただきましたが、ホームページに辿りつけなかった団体など、とても残念に思いました。どれも割り切れず幾度となく読み返しました。
 本当にその活動の活力となるスパイスになり得るのか、その先に見えてくるものは何か、改めて考えさせられました。それとも、もっと軽い乗りでいいのかな・・・とも。
 最終的には、この判断で良かったのだろうか・・・。との思いでタイムリミットを迎え、己の判断力のなさに申し訳ない気持ちになりました。
 今まで、見知らぬ皆さんの活動が、この機会を通じて、本当に身近に感じられました。そして、全国さまざまな形で熱心な思いで活動をされていることに、たくさんの"元気!!"をもらいました。「一度、訪ねてみたいです。」の思いにも駆られました。
 皆さんの活動に、心からエールを送りたいです。
 このような機会をいただき、本当にありがとうございました。


宮田喜代志 (明篤館)

 はじめて予備審査に参加させていただきました。助成金の趣旨に加えて、私自身いくつかのNPO法人の運営や設立に関わってきた経験から、次のような点に分けて判断してみました。
 まず事業理念の社会性とその緊急性、次に事業としての計画性と実現出来そうな「迫力」、そして私の主観的なことなのですが「これは一緒にやりたいな」と思えるかどうか…の3つです。
 とくに理念はそれぞれにあると思います。しかし、それは他の人に伝わってこそのもの。私一人がいきんでもしかたがない、産みの苦しみこそ多くの人と分かつべきだった、ということが最近ようやく解ってきたのです。「困難は分割すべし」(ルロイ神父;井上ひさし)です。
 そんなことなどあらためて初めの一歩の緊張と熱くなる目頭を思い返す貴重な機会となりました。ありがとうございました。


斎藤正俊 (コムケアセンター)

 それぞれ志を持って取り組まれている事業を選考できるほどの立場ではないと承知しつつ、私の知り得る範囲で評価させて頂きました。特に重視した点は事業の発展性であり、言い換えれば社会性と革新性と経済性です。ただし、経済性は社会性と革新性が高ければ工夫次第で高めることは可能だと思うので、そこで、社会性と革新性の2点に着目して評価させて頂きました。結果として、社会性はコムケアの理念や今年の重点テーマに関連するため、ほとんどの事業が少なからず伴っている印象を受けましたが、一方、革新性は全体的に乏しかったように思います。将来性のある事業は競合団体が少なからず存在すると思うので、このような状況下では、社会性がどれほど高くても、独自性、言い換えれば革新性がなければ事業を発展させていくことは難しいと思います。ですから、事業の革新性についてもっとご配慮頂ければと思いました。


麻野信子 (NPO法人さわやか徳島)

 この度は良い機会を下さり勉強になりました。新しいNPO活動の中で医療・保健も福祉の分野として、福祉をグローバルにとらえた助成資金への企画に感動致しました。
 どの企画も活動を楽しみ、仲間の生きがい活動と愛する町づくりに、熱い情熱を感じます。これからの社会には、ますますネットワークと情報が重要になると思います。そして、その中で活動自体は細分化されていき小さいネットワークの中で助け合いを必要としてきます。そのためにも今回、できるだけ実践した企画を選択させて頂きましたが、どの企画も素晴らしく私たち団体の今後に向けての勉強になりました。感謝申し上げます。


須田正子 (よりあい*ええげえし)

 初めての予備選考をおそるおそるお引き受けしました。
 申請書の内容を読み解くことができるか、そこに込められた様々な思いをちゃんと受け止めることができるか、等々、不安がよぎりましたが、いざ申請書を読み進めてみると、思った以上に難しいものでした。
どの申請書にも熱い思いが詰まっていて迷うばかりでしたが、コムケアの評価基準を判断材料にして、自分なりの点数表を埋めていきました。
 そして何度か読み返しているうちに、第一印象とは違った面が見えてきたり、自分だったらどうするだろうと考えさせられたり。
 又、ノウハウやアイディアは今後の参考になりましたし、応募のプロジェクトから、未来の姿が見えるもの、終わったあとの広がりが感じられるものに興味を覚え、自分の関心のありように気づくこととなりました。
 結局は、自分自身を問い直し、自分が求めているものを再確認した予備選考でした。貴重な経験をありがとうございました。


小山美代 (社会福祉士)

 私の担当した提案は、30テーマ。大きくわけて、まちづくり、障害者とアート、路上生活者等の社会的弱者の支援など。まちづくりについては、「あたたかな物語」を感じさせ、まちの再生、伝統的な文化の復興などまちを見直そうとするながれを感じました。なかでも、高齢者の取材活動を通しての世代間交流をめざしたものは素晴らしい取り組みだと思います。高齢者の話しに耳を傾け、主人公となる場を設定することは、高齢者の尊厳のある暮らしの実現につながるものです。
 障害者とアートやおしゃれの提案が3テーマ。アートのプロと障害者のコラボレーションは、きっと互いの可能性への再発見をもたらすでしょう。その成果を、どんどん社会に発信してほしいものです。
 社会的弱者の居場所づくりの提案は、DV被害者やひきこもり、お年よりなど、「いつでも、誰でもいらっしゃい」と多様な人々を排除せず受け入れるというものです。単一ではなく、多様性のある場づくりが必要とされています。
 路上生活者への提案が、年を重ねるごとに増えています。社会が路上生活者に関心をもち、「してあげる」から「本人の能力を引き出す支援」が求められています。
 また、本年度の内容に調査(たとえば、住民の意識調査)が増えていました。従来、多くのNPO法人は情熱が先行していましたが、行政や社会に問題解決を訴えるとき、客観的データなど根拠となる資料が重要になります。コムケアの仲間も、この分野に進出して力を発揮することを願っています。
 年々、内容も充実し、審査する私も感心したり、感動したり…。様々な人々や組織を「つなぐ」、「結ぶ」ことにより、小さな力が結集して、大きな福祉、みんなが幸せを感じるまちづくりが実現するのだと思います。


橋本典之 (コムケアセンター)

 スタッフとして関わらせて頂いてから今回で3度目の予備選考となりました。今回も以下の評価基準を重視し評価させて頂きました。<@社会性:本プログラムで定義する「大きな福祉」の理念に沿っていることA先進性:これまでなかったような新しい要素が含まれていることB発展性:一過性のものではなく、継続的であり発展が期待されることC汗のかき具合:お金で解決しようとしていないことD支援の必要性:支援することが実現の不可欠な要素であることE今年度の重点テーマからの評価:テーマの要素が含まれていること。>それぞれの視点から感想を述べさせて頂きます。
 @社会性は、3年前に比べ確実に増えています。それはテーマ分析がはっきりとできないことに現れています。つまり、障がい者支援のみ、高齢者支援のみという活動が減ってきたということです。
 A先進性は、テーマについてもプロジェクト内容についても今までにないようなものがいくつかありました。ただ、数字で表すとそれほど多くはありませんでした。
 B発展性は、申請書から読み取れないところが多くありました。実際にお会いして話をすれば、継続性や発展性が出てくるのでしょうが、申請書上では目先のことしかなくマイナス評価になるところが多かったです。
 C汗のかき具合D支援の必要性は、申請書だけではなかなか伝わりづらいものです。ただ当事者団体や当事者と一緒になってやる活動が増えています。選考に残っていくのもそういった現場が見えるプロジェクトでした。
 E重点テーマからの要素は、今年度から新しく加わった基準です。このテーマが入ることで介護・医療に関するプロジェクトが殺到するかと思いましたが、そうではありませんでした。介護は介護保険制度の導入で助成金をもらうという方向に向かなくなっているのかもしれません。しかし、今回の重点テーマは介護保険サービスというよりも、もっと身近な暮らしの中の視点を強調していました。介護・医療以外では暮らしの中のつながりが多く含まれていましたが、介護・医療に少なかったのが残念だったと思います。
 毎年のように感想に書いている気がしますが、申請書の書き方というのはとても大切です。たとえどんなに素晴らしい活動をしていてもそれが伝わらなければ意味がありません。コムケアセンターでは申請に関する相談にも乗っています。申請書を出す前にもう一度見直して頂けたらと思います。


加藤木桜子 (特定非営利活動法人ゆうゆう)

 かなり厳しい目で見たつもりだったが、どれも興味深い内容で、絞り込むのが難しかった。特に、行政の支援を得られにくい分野、緊急性を要する分野も多く、評価が難しいと思った。そのため、ここで助成をすることで、その後先々まで続いていくかどうか、という視点を重視しながら評価を試みた。
 今回、いろいろな団体の活動内容を読んで、しみじみ思ったのは、「教育的な見方と福祉的な見方の違い」ということだった。福祉の視点で行っている活動でも、「啓発」「社会教育」という視点で行っている活動も、やりたいこと・やってきたことは共通する部分があるのに、切り口が違うと感じた。それは、今までもなんとなくは感じていたところだが、今回改めて感じるところだった。それらの活動が、良い形で連携できるようになるといいんだろうな、と思った。