経過報告

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■選考委員の講評

予備選考委員の感想

  [選考委員講評]

木原孝久 (住民流福祉総合研究所)

 今回私自身の当初の評価では、Sはゼロ、Aが3件程度、Bが10数件というところでした。そちらの指示に従って、Bの多くを格上げして、Aを10件、創り出しました。ちょっと厳しい評価の仕方かなとも思いますが、狙いが良いだけに、それをもっとおもしろい企画に作り出せなかったものかと、そこが残念に思って、評価を下げたというケースが多かったように思います。
 そこで思ったのは、既に企画が出来上がった段階では、どう対処することも出来ないので、例えば(申請があれば)彼らが事業企画をしようという段階で、出向いて、直接、企画会議に顔を出して、魅力ある企画に仕上げる手伝いをするという方法もあるような気がするのです。企画会議へ出前のサービスです。
その企画会議に参加する中で、「これは面白い活動になるぞ」と思うものに「目をつけて」助成対象(候補)に加えていくというわけです。企画会議に参加して、一定時間議論をすれば、ものになりそうな活動かそうでない活動かは、おのずと見えてくると思います。そこでこそ最高の選考ができるのではないでしょうか。短期間ではできませんから、それこそ1年ぐらいをかけて、じっくりと助成対象(その候補)を探し出し、これからやろうとする事業について聞き出し、その企画に参画し、いろいろアドバイスしていくのがベストでしょう。
 それがむしろコムケアのメイン事業とし、助成に関わる手続きやイベントは、副産物である、ぐらいに考えたらどうかと思うのです。それを自分でやれるかといわれると疑問符がつきますが、できる方法を考える余地はまだあるような気はします。
 長い間、選考という役割を演じてきましたが、いまだに、どの活動グループが、「資金助成の価値があるか」あるいは「資金助成も必要か」ということが、申請用紙をいくら見てもわからないのです。仕方がないから、選考委員は各自、申請用紙を読んだ上で、その限られた文字の中から、もっともらしい推薦理由を見つけ出して発表しているのですが、そういう委員の発表を聞いていて内心、「ずいぶん確信をもって言っているな」と不信の目で見てしまいます。
 一枚の申請用紙だけでなく、もっと判断の元になれそうな、申請グループに関する「なま情報」がもっとあったらと思います。その点で、大変ではありますが、前掲のように、実際にグループの企画会議に参加して、その活動の意義や助成の価値ありやなしやを、じかに判断できるといいのですが。


町田洋次 (ソフト化経済センター理事長)

 今年の春から夏にかけて、わけあってアメリカの社会起業家のことをずいぶん調べました。それで痛感したのが、彼らの組織拡大意欲のすごさです。社会起業家は、社会問題の解決策のアイディアを思いつき、それをビジネスの手法で仕組みを設計し、試行錯誤の実験のあと、本格的な事業化に着手します。
 問題はここからです。彼らのやったことは、社会によい影響を与えますが、それを「ソーシャル・インパクト」といい、一刻も速くインパクトを広げることを狙います。ベンチャーは、一刻も早く上場し、投資家に儲けをもたらすのがプレッシャーになりますが、同様に、一刻も速くインパクトを広げるのが社会起業家に働くストレスです。社会には、問題解決を待っている人がたくさんいるので、それを考えれば、当たり前のストレスです。そのために組織開発が大切なことになりますが、ここまで来ると、支援者がたくさん現れ不思議なことに、組織拡大は実現してしまいます。
 日本には、この気持ちが欠けてます。こじんまりとまとまるのでよいという風潮があります。それは惜しいことで、社会を大胆に変えることを目指して欲しいのです。その辺りが、今回審査して不満に思ったことです。


片岡勝 (市民バンク代表)

コムケアのミッション
 選考のために応募者からの提案を見させていただくのは、毎年の楽しみだ。そこには時代の新たなニーズがたくさん、詰まっている。治安の悪化、外国人との融合、自殺の多発、少子化への対応など、様々な問題を行政に依存することなく、自分たちで解決しようと言う自立市民の姿が浮かび上がる。彼らが目指すその道は決して簡単ではないが、その後姿には輝きがある。その輝きが共感を生み、協働の輪を地域に広げていく。
 そのシーズたちと選考委員として向き合い、私が推すのは荒削りで、エネルギーを感じる提案だ。どこかで見たり聞いたりしたことのない「新しさ」を持っているものたちだ。時代を写すこれらの応募は将来、問題解決セクターとして崩れつつある行政セクターに取って代わることになるのだろう。そんな市民セクターが次代の日本社会のカタチになっていくのだろう。市民セクター育成をコムケアに担ってもらいたい。


北矢行男 (多摩大学教授)

 今年、審査に携わって感じたのは、応募された個々の活動・プロジェクトが小粒で平凡だったことだ。もっとも助成金が30万円と小粒になったため、応募も自ずとそうなったのかもしれない。お金の使い方も、講師料、会場費、交通費など、当たり前の費目中心である。
 こうなると、支援の仕方を抜本的に考え直す必要があるだろう。NPOの申請する活動への助成よりも、各NPOが自前で自らの戦略を構築できるようサポートするのである。
 例えば、実践的戦略構築技法「シンプルストラテジー」の様な考える技術を研修し、自前で持続的に稼ぐ経営者に脱皮してもらうお手伝いをするのである。助成事業より、研修事業の方が、30万円の使い道として、コストパフォーマンスが良いのではあるまいか。