05’最終公開選考会報告書 −コムケアもうひとつの共創物語−

 


は じ め に

 この報告書は、2005年10月16日に開催された「コミュニティケア活動資金助成プログラム」最終公開選考会の模様をまとめたものです。

 今回は、コムケアフェロー(コムケア有志)の運営委員が企画・準備段階から関わり、新しい試みを実施することができました。参加者は全体で127人。例年同様、NPO関係者中心に企業の方に多く参加して頂きました。また、過去の助成団体およびコムケアフェローにたくさん参加して頂きました。これは、このプログラムが、ただの一過性のプログラムではなく、つながりづくりを目標に活動してきたらこその成果だと思います。

 発表会は、北海道から沖縄まで地方の団体が多かったのですが特に問題もなく、良い雰囲気の中、実施することができました。前回の反省でリハーサルに力を入れてはどうかという意見がありましたが、事前に団体にプレゼンテーションにあたっての資料を送ることのみの対応でしたが、皆さんとても良いプレゼンをして頂きました。

 投票は、発表団体20を含め87人の方が参加しました。今回は過去の助成団体の意見から、当日に結果発表をするのをやめ、翌日に連絡することにしました。

 交流会では、コムケアとのつながりがあるパンやケーキを用意して交流しました。また、ケアップカードという新たな寄付の仕組みを実施しました。「つながりができた。」「思ったことを伝える良いツールになれた。」「自分のところでもやってみたい。」などの意見を頂きました。

 今回は、何よりも選考会に至るまでのプロセスを運営委員が中心になってできたことが、過去の選考会にはない新たな取り組みを生み出せる力になりました。

2005年12月
コミュニティケア活動支援センター
事務局 橋本典之



最 終 公 開 選 考 会 に 至 る ま で

2005年6月27日
コムケア運営委員会準備会を開催
於:コムケアセンター

過去の助成団体のメンバーを中心にコムケア仲間が集まり、運営委員会について、資金助成プログラムについて、今後の活動展開の方向性について議論する。具体的な活動として、最終公開選考会の企画・運営を運営委員会で進めていくことで決定。

運営委員メンバー(今回の選考会に関わって頂いた主なメンバー&当日手伝って頂いたメンバー)
□下山 浩一(コミュニティアートふなばし)
□松清 智洋(名戸ヶ谷ビオトープを育てる会)
□星野 一人(子育ち学リサーチネット)
□阿部 達明(ライフプラン21・東京)
□近藤 将仁(ライフプラン21・東京)
□鶴本 勝代(住友生命)
□町山 律子(住友生命)
□山川 清一(ライフプラン21・東京)
□石井 邦知(茨城学生活動支援組織〜ぐっぴぃ〜)
□鎌田 芳郎
□佐々木 敏之
□田辺 大(手がたりの会)
□渡邊 早苗(住友生命)
□宮田 喜代志(明篤館)
□清水 康之(自殺対策支援センターライフリンク)
□島村 八重子(全国マイケアプラン・ネットワーク)
□須田 正子(よりあい*ええげえし)
□松浦 光恵(NPO支援センターちば)

コムケアスタッフ
■佐藤 修
■宮部 浩司
■橋本 典之
■斎藤 正俊



2005年7月19日
第1回コムケア運営委員会を開催
於:コムケアセンター
事務局より資金助成プログラムについて説明。その後、今年の進め方について議論する。

【資金助成プログラムの位置付け】

・ 資金助成プログラムはコムケア活動の入り口のプログラムであり、それを通して仲間を増やすとともに、コムケアの考え方を広げることを重視している。
・ したがって、応募段階から相談に応じており、また選考にもできるだけ多くのコムケア仲間に参加してもらうようしている。
・ 予備選考や公開選考会に参加してもらうことで、実践者にコミュニケーションやプレゼンテーション体験をしてもらうとともに、自分たちの活動を相対化する機会を提供し、また企業や行政などの人に市民活動の動きに触れてもらうことを目指している。
・ つまり「選考」が目的なのではなく、目的はつながりづくりである。
・ 最終公開選考会は、「毎年スタイルを変えていくこと」。できれば「実験的な試みを入れること」

【新たな試みの意見】

・ 1000円程度の参加費を徴収し、それを参加者が共感できるグループに資金助成金とは別に寄付をする仕組みをつくる。参加感を強めるとともに、個別グループとのつながりづくりにもつながる。場合によってはそれをコモンズ通貨に発展させていくことも検討。寄付の上位は交流会で発表する。
・ ポスターセッションや資料展示の可能性も検討する。
・ 交流会では資金助成先の発表は行わない。今回は20団体に選ばれて発表できたことを喜びあう集まりにする。助成先発表は翌日個別に行う。
・ 交流会で交流を深める仕組みを検討する。名簿などの配布、つなぎ役づくり、ラリーゲームなど、いろいろな案が出された。



2005年8月10日
第2回コムケア運営委員会を開催
於:コムケアセンター
事務局より資金助成プログラムの現在の状況について説明。その後、最終公開選考会の役割分担を決めることを目標に議論する。

【役割分担】

・ 午前の部:
¢ リハーサル、発表団体同士の交流はリラックスできる雰囲気をつくるため新たな取り組みをせず、事務局が担当で進める。
・ 発表・投票の部:
¢ 主な検討課題として司会者、タイムキープの仕方、投票の仕方などが挙げられた。具体的な中身は次回以降検討する。星野さんが担当として進める。(引き続き募集をする)
・ 交流の部:
¢ 会場は移さずに行なうこと、資金助成先は発表しないことで決定。ケータリングは、飲み物だけにするか、コムケア仲間でクッキーやパンを作っているところにお願いするかなど検討課題に挙げられた。予算についての説明も行なう。また交流を深める仕組みも次回以降検討する。下山さん、渡邊さんが担当として進める。(引き続き募集をする)
・ 参加費仕組みづくり:
¢ 参加費を発表団体への寄付にする仕組みづくりについて前回に引き続き検討。実に様々な意見が出たので今回だけではまとまらず、(下記参照)決定事項としては今回の選考会は『参加者にも寄付の機会を用意する』ということで進めることで決定。松清さん、阿部さん、近藤さんが担当として進める。(引き続き募集をする)
¢ 主な意見
投票券のデザインを凝る。名前とメッセージが書けるようにする。
投票券は最低1枚買ってもらえるようにする。
投票券をもらった団体は必ずお礼をするようにする。
投票箱に団体のことがわかるチラシを貼る。
交流会で上位3つを発表。(助成金の発表をしないのに発表するのはどうかという意見もあり)
資金助成の投票と投票券(参加費)とが混同しないような説明が必要ではないか。 など



2005年8月23日
第3回コムケア運営委員会を開催
於:コムケアセンター
当日のプログラムの決定・推進体制の確認の後、役割毎に議論する。

【当日のプログラム(時間)を決定】

・ 『12:30スタート』と『13:00スタート』2つのケースで検討。(午前中はスタッフ集合9:00、発表団体集合10:00で決定)会場の関係で17:00に現状復帰して完全に出なければならないため、片付けの時間を考えると早めスタートの方が良いのではないかという意見あり。また、時間が延びても対応できるということで、『12:30スタート』で決定。大枠は以下のとおり、

¢ 9:00 スタッフ集合
¢ 10:00 発表団体集合/動作確認など
¢ 12:00 開場
¢ 12:30 イントロ/メッセージ/選考について(30分)
¢ 13:00 前半グループ発表(10団体3分)
¢ 13:40 休憩(20分)
¢ 14:00 後半グループ発表(10団体3分)
¢ 14:40 クロージング/投票の説明/投票用紙への記入(20分)
¢ 15:00 発表会終了
¢ 15:20 交流会開始(70分)
¢ 16:30 交流会終了
¢ 17:00 完全撤収

【推進体制の確認】

・ 役割毎に分科会的に進めることで合意。最終選考会実行グループとして今後動いていく。(モノを用意したり、人を集めたり、必要なことはコムケアで対応する。)
・ 役割の中でもリーダーを決め、その人が中心となりMLを中心に進めていく。
・ 選考会までに2回ほど集まりを予定。

【寄付の仕組みづくり】

・ 寄付のお金を『参加費』として取るのか『寄付券』として取るのかをはっきりさせる。
¢ できるだけ多くの人に寄付に参加してもらうため『参加費』として取ることで合意。そこから寄付へ。
・ 寄付の額について
¢ 払い易さから『500円』か『1000円』で検討。1000円では学生は参加しないのではという意見あり。しかし『軽い気持ちで参加すること』と『払ったことによるドキドキ感』両方を微妙に持ち合わせているのは1000円ではないかということと、交流会でドリンクおよび軽食が出るということから『1000円』で決定。
・ 寄付の仕組みの説明について
¢ 発表会の投票と混同しないようにする。
遊び感覚。寄付者の主観を前面に。
寄付の仕組みについて説明レジメを用意(A4 1枚程度)投票との違いをはっきりさせるためビジュアルを用い作成する。
寄付の仕組みの説明者を投票の説明者と変える。
・ 具体的な方法
¢ 寄付のカード(名刺サイズの2つ折)メッセージ・連絡先を書けるようにする。
¢ 回収箱は団体の数だけを用意。(20箱・BOXティッシュサイズ)
¢ 寄付の時間を制限し、みんなが寄付できるようにする。
¢ 集計後、上位5団体を発表。その際、お金を手渡しすること、模造紙で上位団体の寄付額の発表を検討。
・ その他の意見として、メッセージを壁に貼ってみんなに見てもらえるようにすることや、事前に発表団体よりお金ではない欲しいものを聞き出しておいて、提供できる人はメッセージに書けるようにしてはどうかという意見あり。
・ この仕組みをパッケージ化して、他のところでも活かせるようにする。

【交流会】

・ 交流会の予算は10万円程度
・ 軽食(お菓子・パン500円*110名分)と飲み物は、コムケアMLで提供を呼びかける(もちろん有料で買取り)。
・ できれば、選考会当日に来ることが難しい、遠方の団体に担当していただき、"製品"で選考会を盛り上げていただきたい。

【広報】

・ 今までとは違う、『運営体制』『寄付の仕組み』をアピールすると同時に『コムケアがどういう団体なのか』をもっとアピールしていく必要がある。



2005年9月27日
第4回コムケア運営委員会を開催
於:コムケアセンター
広報戦略の確認、当日までの流れの確認を目標に議論を進めていく。

【広報戦略】

・ 選考会への参加の呼びかけ
¢ メーリングリストなどで案内を告知していく。
¢ 昨年の参加者にメールで案内する。
¢ 企業経営幹部のネットワーク組織(KAE)に案内する。
¢ 関心を持ちそうな人の集まりでチラシを配布してもらう。
¢ 応募団体やこれまでの参加団体にチラシを郵送する。
¢ 今回の発表団体にも集客に協力してもらう。
¢ 東京ボランティアセンターや日本NPOセンター、シーズなどにチラシを郵送する。
¢ 今年度の応募団体にチラシを郵送する。
¢ 新聞の案内コーナーに情報を送る。
¢ コムケア仲間による口コミ
・ 取材のための広報
¢ 厚生労働省の記者クラブに10月11日に投函する。
¢ 朝日新聞、読売新聞に働きかける。 ※産経リビングは効果あるという意見頂く。
¢ 雑誌への働きかけ。

・ 参加者イメージ(目標)
    発表団体関係者   60
(各団体が自分のほかに平均2人を集客)
    NPO関係者    50
    企業関係者     40
    行政関係者     15
    学生        15
    スタッフ関係    10
    合計       190

【当日までの流れ】

9/27〜
 □チラシ配布
 □マスコミへの広報
 □経団連への広報
 □司会者決定
 □イベント支援プログラム作成
 □ホームページ更新
 □スタッフ募集
 □一般の配布資料の呼びかけ
 □事務局長ppt作成

10/4〜
10/5締め切り
 ■結いこむ原稿 □結いこむ印刷
 ■選考資料原稿
 □当日スタッフの役割分担
 □会場確認
 □投票用紙/投票回収箱作成
 □発表団体の座席表の作成
 □寄付の説明書/寄付券/寄付箱作成
 □案内看板作成
 □選考資料作成
 □交流会・軽食/飲料手配

10/11〜 10/11締め切り
 ■マスコミ取材の働きかけ
 ■発表団体pptデータ締め切り
 ■選考資料の事前発送
 □当日の備品確認
 □お弁当注文
 □司会シナリオ作成・司会者との打ち合わせ
 □配布資料封筒づめ
 □参加者名簿作成
 □最終スタッフ打ち合わせ 
 ※10月11日(火)19時〜

10/16 選考会当日

2005年10月11日 最終スタッフ打ち合わせ中止。
メールでのやりとりを中心に準備。当日に臨む。

 



最 終 公 開 選 考 会 プ ロ グ ラ ム

【発表会】

12:00 開場

12:30 オープニングメッセージ
      コムケア紹介およびこれまでの選考過程の説明

13:00 前半グループ発表(10団体各3分)

13:40 休憩(20分)

14:00 後半グループ発表(10団体各3分)

14:40 クロージングメッセージ/投票用紙記入

15:00 発表会終了

【交流会】

15:20 交流会開会

  住友生命社会福祉事業団常務理事挨拶
   ケアップカードによる寄付および発表
  手がたりの会によるマッサージ

16:30 交流会閉会



寄 付 シ ス テ ム( ケ ア ッ プ カ ー ド )

今回初めての試みでケアップカードという新しい寄付の仕組みを取り入れました。
このケアップカードはさまざまな物語を生み出してくれました。

>>ケアップカードについて


交 流 会 メ ニ ュ ー

過去助成団体およびコムケア仲間に声をかけて、おいしいパンやケーキで選考会に参加してくれました。

>>交流会メニュー

 



報 告

>>当日の様子


【ケアップカードについて】

・ ケアップカードの投票への参加者は75人。予想以上の参加になり、これからの展開を考える上での参考になった。
・ ケアップカードへの寄付数は添付資料の通り。
・ ケアップカードには応援のエールや資金以外で提供できるものなどを書いてもらったが、これは発表団体へは大きな勇気づけになったようで、感謝のメールがコムケアセンターにも届いた。またこのカードを通して生まれたつながりもいくつか出はじめている。


【参加者内訳】

・ 氏名確認できた参加者はスタッフも入れて127人。投票に参加したのは88人。内訳は次の通り。

参加者
投票者
備考
NPO
70
46
 
企業
38
28
マスコミを含む。
行政
 
学生
 
大学
 
ほか
主婦及び属性不明者。
合計
127
88
 


【マスコミ・取材】

・ 取材は特になかったが、読売新聞の記者が投票にも参加してくれ、コムケア活動への共感を示してくれた。これから発表団体などの取材や応援をしていきたいと申し出を受けた。
・ マスコミ関係者は読売のほかに、日本テレビと日経が参加。いずれも取材目的ではなかった。また、発表団体の「心に響く文集・編集局」の活動を追跡取材している関係者も数人参加。

【最終選考結果】

>>2005年度助成団体一覧

【選考会を終えて・・・】

コムケアのブログ「コムケアセンターからのメッセージより」

メッセージ44【今年の選考会も元気な会になりました】

メッセージ45【ケアップカードによる応援のエールの仕組みをつくりました】

メッセージ45【交流会でもコムケアのネットワークが活躍しました】

メッセージ46【自分たちに投票しなかった発表団体が出現しました】

メッセージ48【選考会開催の裏話:資金がなくてもイベントは開けるかもしれません】

メッセージ49【選考委員のみなさんからのコメント】



お わ り に

 選考会から1か月以上が経過しました。発表されたプロジェクトが順調に動き出すとともに、選考会で出会った人たちの交流も少しずつはじまってきています。今回もまた、いくつかの新しい物語が生まれそうです。

 コムケア活動が重視しているのは、みんなで汗と知恵を出しあって何かを創りだしていくという「共創」精神です。この報告書で紹介したように、今回の選考会はまさに「共創」の成果です。こうした「共創の輪」をもっともっと広げたいと思っています。

 選考会終了後の運営委員会では、各地でコムケアフォーラムを共創できないか、という話が出ました。来年の春には、これまでコムケアの資金助成先になった活動のその後を発表しあうようなコムケア大会を開いたらどうかという意見もあります。コムケアの共創の輪は広がっていきそうです。

 コムケアサロンも少しスタイルが変わりそうです。これまでは事務局が企画運営していましたが、これからはコムケアフェローの有志が分担して企画運営することになりました。事務局は場所の提供と案内を流すだけです。コムケアフェローから、こんなテーマでサロンをしたいという声も寄せられだしました。サロンもまた、共創型へと移りだしそうです。

 コムケア活動が目指すのは、新しい「結い」です。自立してそれぞれの活動に取り組むメンバーが、テーマを超えてお互いに支えあいながら、だれでもが気持ちよく暮らせる社会を実現する、そんなつながりが育っていけばと思っています。

 コムケアのネットワークは、だれでもが使い込める仕組みです。このネットワークを活かしながら実現できることはたくさんあるはずです。
どなたか何か仕掛けませんか。次はきっと、コムケアセンター事務局ではない人による報告書になるでしょう。とても楽しみです。

2005年12月
コミュニティケア活動支援センター
事務局長 佐藤修