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選考委員の講評

町田 洋次さん(ソフト化経済センター理事長)

 私が担当したのは、第一次評価がすんだ40件を20件に絞る作業だった。この20件を最終評価会議にかけて10件を選び助成先を決める。
40件を、1位から40位に並べみたところ、上下の差は大きく広がった。上位のものはとびきりよいが、下位にくるものは、がっかりするほとダメなのだが、この格差の広がりに驚いた。
なぜだろうと考えたが、これはコムケアの活動が末広がりに広がっている証拠で、まだ始めたばかりの新規参入が増え、一方、先発隊はどんどん先に行っている現象なのだと理解した。
事業を始めたばかりの人と、3年やっている人を較べると、それは3年の事業プランのほうがよく見える。熟度の差だが、これが原因だろうと想像した。ほんとは、新規参入者グループ、3年グループとかに分けで、同じ熟度どうしで比較するとよいのだが。
これが今回の評価の感想であるが、社会起業で大切なことは、「やり続けること」である。やっていると、共感した人々が寄ってきて、活動は進化する。収益第一主義の起業では、やり続けても赤字だと倒産だが、社会起業ではこれがない。
創業時に借金をするわけではなく、人の輪を大きくし、お互いに助け合う社会をつくるのが目的だから、やり続ける効果は絶大である。爆発するまで、やり続けろだ。爆発しなくても、自己実現ができた楽しみがあったのだから、それでよいではないか!
 こんな境地になることが必要だ。今回助成からもれた人は、めげずに続けてほしい。そうすれば、いつかはよいことが訪れるはず、と思おう。


片岡 勝さん(市民バンク代表)

 4年目になったコムケア資金助成の交流会で審査員として挨拶させてもらった。
「多様なテーマが集まり、競争し、提携し持ち寄られて問題を解決していく皆さんの試みが、日本を新しい社会変革に向けて加速しシフトさせる」というようなことを言わせてもらった。
その後、久しぶりの東京で地下鉄に乗りながらそれを反芻していた。私は東京生まれ東京育ちだが「地域から日本を変える」と宣言し居を地方に移した。飛行機と新幹線が主な住まいになった。市民が社会サービスの主たる担い手になるという仮説のもとに、市民バンクなどを創設しコミュニティビジネスを支援してきた。戦後、日本人
は行政にサービスを委託してきた結果、依存体質が染み付いてしまった。既に市民セクターに能力も金もあるのに、なかなか、その潜在力に気付かないで来た。表彰を受けた方のひとりが「政府の方針はいろいろ説明されるが、結局は障害者への支援はなくなっていく」と不満を述べられていた。欲しい・足りない・出せないの議論に風穴を開けるのは自ら雇用を創出する仕事作りだと思う。簡単ではないが、そんな企業をも巻き込む動きも出始めている。組織がないと社会参加できない行政や大企業で働く人々はそこで頑張ってもらえば良い。ただ、政府の言う官民競争入札制度のような市場テストで効率性と有効性を民間と競うことが条件になる。
交流パーテイーで会った大学4年生は「先生の本を読みました。『就職してみないと社会は分からない、という学生の質問に、それは君に自信がないからだ』という文章に出会い、就職せずにケアプランを自分で作る活動を自分の事業にしようと決心しました」と元気が良い。今不足しているのは地域で、こういう事業を起こそうという人々だ。地域の財を持ち寄り・組み立て事業化する。そんなリスクを自らとる社会作りが増えれば、古い体質の残滓を早くなくすことになる。コムケアーに応募された皆さんが経済性を自らのものとして自律する過程で私との接点ができると嬉しい。そんな多様な地域経営者作りこそ旬なテーマだ。それを地域に作る仕事は忙しいが面白い。私自身、楽しくてしょうがない。『地域から日本を変えよう!』


北矢 行男さん(多摩大学教授)

 4年間のコムケアのプロジェクト審査に係って、「コミュニティでの問題解決への取り組みが市民的拡がりを見せており、この動きが着実に進展しつつある」という強い印象をもちました。
ただ、今年も気になったことは、応募された皆さんの中に、「自分たちの取り組みは正しいのだから、支援を受けて当然だ」という暗黙の考え方があるようにも見受けられたことです。
そのためか、お金のフレームも含めて、第三者(たとえば行政)に頼らないで、自前で問題を解決していこうと気概が足りないように思いました。身近にある様々な要素を有機的に結びつけ、ソシオ・ビジネスとして展開していけば、自立してやっていけるだろうと思われるプロジェクトが多く見受けられただけに残念でした。
とにかく、"自前のプロジェクト"として、経営的に自立してやるのだという志を徹底して貫くところに、知恵が生まれ、関係者の協力も芽生えてくるのだと思います。そのための経験交流の場が、コムケアセンターなのだと思います。