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予備選考委員の感想
2002年活動支援プログラムの予備選考委員の感想です。
個人名ははずさせてもらい、所属分野だけの表示にさせてもらいました。


(1)昨年の資金助成先団体

分厚い宅配便の封を開けて、上から順番に数枚の申請書を読み始めてすぐに、「こんなこと、引き受けなければ良かった…」とため息が出てきました。
どの申請書をとっても、行間に熱い思いがあふれ出ていますし、活動内容は社会にぜひとも必要なものばかりですし、こんなに細かい項目で5段階評価をつけるなんてムリ、私の能力の限界を超えている…。そう思ったのです。数字で評価をするとなると、私のように慣れていない人間は、どうしても減点主義に陥ります。欠点を探すのは性に合いません。
白状すれば、コムケアセンターにギブアップの電話をしようと、受話器まで取りました。でも、どれも素晴らしいということを表明するのもひとつの評価かも、と気を取り直し、ほとんど差のない評価を提出したのです。
公正な評価をするとなると、点数で比較するのがもっとも合理的なのかもしれませんが、各団体の思いが数字に置き換えられてしまうのは、何とも残酷だと感じました。できれば予備選考も最終選考のように、「ここを応援したい」と思う団体を30団体選ぶ(落とすのではなく選ぶ)とか、そんな選考だったら…と思います。
ただ私にとっての意義は大きなものでした。皆さんの書類を読んでいくうちに、「日本はまだまだ大丈夫」と明るい気持ちが広がってきたからです。毎日暗いニュースが続き、景気もどうなるかわからない、そんな日本でも、ちゃんと道を模索している人がいる、それもこんなにたくさん…。評価がうまくできず、選考には貢献できなかったと思いますが、皆さんの存在を知ることができて、本当にラッキーでした。


(2)昨年の資金助成先団体

69通の活動資金助成申請書に記載されたプロジェクトを読み、神戸の大震災を契機に日本に於いても急速に多種多様なボランティア・非営利活動が展開されていることを改めて実感させられました。NPO法人の多さも印象的でした。一般的にはNPO法人数急増の理由としては法人格取得により対外的に信用度が増すこと、寄付、助成金が受けやすいこと、税控除等々のメリットも考えられます。それだからこそ、法人格取得以後の活動についてのチェック機関が存在しない現在NPO法人の急増には一抹の不安を感じます。
行政面ではまだまだ福祉後進国である日本に於いても、住民レベルでは高齢になっても障害をもっても住み慣れた地域で安心して暮らし続けられる地域づくりを目指して活動している数々のプロジェクトがあり、地域福祉に向けての取り組みが広がりつつあることが感じ取れました。しかし、それぞれのグループが縦割り的に活動しているのが現状です。各活動についての情報不足もその一因と思われます。コムケアを核として情報を交換し合うことによって同じ分野で活動しているグループ間、或いは、活動を異にするグループ間の協働もでき、又、それが広がることによって「大きな福祉」の構築ができるのではないかとの期待感を抱きました。
反面、本当に多種多様なプロジェクトがありましたが、先進性・独自性の強いプロジェクトや老若男女、障害の有無を問わない誰もが参画できるプロジェクトが余り見受けられなかったことは残念に思います。
評価するに際しては助成金受給が活動を軌道に乗せることに結びつくグループにこそ助成金をと記載事項をチェックしましたが、比較的新規に立ち上げられたプロジェクトが多く、グループの本質を判断するのが困難なケースが多々ありました。従いまして、各プロジェクトの構成員、特に中心となる人の活動来歴、当該プロジェクトを展開していくとこによってどんなことが為しえるのか、及び、助成金の使用用途に加えてプロジェクト遂行に要する年間経費の概算の記載があると判断しやすくなるのではないかと思いました。


(3)昨年の資金助成先団体

正直なところ、申請書から活動を評価するということがこれほど難しいとは思いませんでした。まず、活動対象・活動内容が多岐に渡っているということ、そして活動団体の形態や立ち上げ方もさまざまだということ、助成金の使い方についても同様のことが言えます。
まして審査する側も本当にコムケアの精神や理念が共通認識されての上かというとはなだ疑わしい。審査基準は、個人的なとらえ方や好み・志向に頼る他ないというのが審査員側の実情ではないでしょうか?
やはり審査するからにはあらかじめ何らかの指標が必要だと感じました。
たとえば、「今年はおもに、こういうところを重点的に支持しよう。」といったようにある程度、活動内容や対象を限定するといったような・・。
一次審査ゆえそれはあえて必要ないのかもしれませんが、非常にむずかしい・・。
それぞれ想いといったものは伝わってきますし、社会的な使命ももちあわせておられます。
それでは何で区別したらよいのか、他の財団にはないコムケアならではの指標の共通項を少し提示していただければと思った次第です。(ちゃんとあったのかも知れませんね。)
*事務局のコメント
大きな枠組みとしては「大きな福祉」に向けての支え合い志向なのですが、その点の説明や組み込みがまだ不十分でした。次回は改善していきたいと思います。


(4)昨年の資金助成先団体

色々な団体の思いを共感でき、また、企画力向上の為に参考になり、ありがとうございました。
第1印象は、子ども主体の企画がほとんどなかったこと。私たちの目指すものが"子ども"だからでしょうか?わくわくするような"夢"を実現させる為にはやはり、大人がどこに視点をもち、サポートしていくかが大切だと思います。
また、老人福祉での申請が多いようでしたが、自分達だけの企画に留まらず、ユニバーサルデザインの視点で、視野を広げた企画であるとコミュニケーションにも幅が出てくると感じました。
あとは、"思いをいかに文字を通して相手に伝えるか"が重要だと改めて感じました。自分たちだけで通じる文字(言葉)の使用で理解不可能だったり 、言葉を羅列しすぎでどこを1番アピールしたいのかが通じなかった。
最後に私たちのような民間の1団体が、企業の申請書選考に関わる事ができ、貴社の助成する側・される側が対等の位置で接して頂いたのがすごくありがたかったです。


(5)昨年の資金助成先団体

今回は大変貴重な体験をさせていただき、ありがとうございました。
今までいくつかの助成金に応募する体験は何回かあるものの、選考する立場での参加は、昨年のコムケアの最終選考のプレゼンでの選考が初めてでしたし、今回みたいな参加の仕方はまったく初めてでしたので、逆の立場から見ることができてとても参考になりました。それにしても、コムケアの助成申請の間口の広さもあるのでしょうが、老人・障害者・地域活動までさまざまなジャンルの応募があり、さまざまな刺激を頂くことができました。
ひとつには、やっぱり市民活動は元気だ。日本の現状を変えていくのは、(自分の思い入れもありますが)市民運動だということを実感することができたことです。申請書類に最初に何も考えずにざっと目を通したのですが(ちょっと数が多かったけど)、次はなんだろうと結構わくわくしながら読みすすめることができました。ワープロで整理されてプロジェクトで面白い視点でがんばっていてとても参考になるものもあれば、手書き申請書であまり整理されているとは言いがたいけれども、地域の中で現実に負けないで何とかしようとかんばっている息吹が伝わってくるものもありで、やっぱり、この市民の活動の一つ一つが地域を変えているんだという事が感じられて、元気をもらったような気がします。
もうひとつ感じたことは、3枚・4枚の申請書でその団体の何が分かるのか、とても不安になりながら、あまりいろんなジャンルがわかるわけではなし、地域特性が分かるではなしの中で、こちらが点数をつけていくことの躊躇というのがあったことです。行政や専門化が選考しても、「減点主義」であまり面白い選考になるとは思えないのですが、私たちが選考の側に回るというのも、さまざまなジャンルに対する課題意識を持っていないと、単なる「素人の参加」で終わってしまう危険があります。何が先進性なのかという指標が自分の中でなかなか明確には見えない中で、今まで聞いたことがあるシステムには高い点数をあげなかったけど、その地域にとっては本当は一番困っていることだったかもしれないし、仲間や市民が困難に感じていることに一番敏感なのが先進性なのではないかと思えてくると、点数をつける手が止まってしまうというのが実態でした。その意味では自分の視野の狭さや勉強不足で、ちょっとつらいものがありました。最終選考の10月20日にも仕事で参加できず、最後まで見届けられなかったのもちょっと心残りでした。
申し訳ない選考になってやしないか心配ですが、個人的にはいろんな経験をさせて頂き、感謝をして、感想とします。


(6)昨年の資金助成先団体

コムケア活動書類審査にあたり、まずそれぞれの活動団体の個性豊な活動内容に感心させられました。それだけ自己主張が出来るような社会になったということでしょうか。
審査にあたり感じたことを下記に述べさせていただきます。
<良かった点>
・活動内容が多種多様で、各団体の視野の広がりを感じた。
・書類の書き方が丁寧にわかりやすく書かれている団体が多くなった。
・同じ活動をしている立場で、逆の視点で活動団体を見ることが出来たことは、
・申請内容に、コムケアセンターの「縛り」がなかった分、自由にのびのび表現されていた。
大変勉強になりました。
<意見>
・先駆的な活動やアイデアに富んだ活動が多くなったことは喜ばしいが、内容の重みがあまり感じられなかった。
・表面的すぎる活動内容もあった。
・活動内容は豊富だが、出来れば、「事業後の成果はこのようになる」などの書き込みもあると、もっと納得させることができるのではないでしょうか。
・書類の中に、団体本来のもう少し詳しい活動内容と、そこに携わるマンパワーのようすが記載されているとより背景が見えてくるのではないでしょうか.
今回、書類選考審査に参加させていただいたことは、私自身の活動を外部から見させていただいたような気がいたしました。
改めて、丁寧に活動を行って参りたいと思います。


(7)福祉系公立研究所研究員

応募されたすべての活動内容は素晴らしく、優劣がつけがたいように思えた。ここに応募されたみなさんの情熱が、新しい日本の福祉や人々の生活を明るい希望に満ちたものにしていくにちがいないと確信している。
審査を終えて、以下のことを感じた。
1)福祉とアートのつながりは、目を離せない。利用者に心の豊かさを育むアートが、これからの福祉のめざすべき方向の1つであろう。
2)在住外国人の生活や福祉をサポートし、共に地域で助け合い仲良く暮らすことの大切さを、多くの日本人は気づかなければならない。
3)日本の精神障害者対策(たとえば投薬中心で病院に隔離することが多い、不十分な社会復帰体制など)が諸外国に比べて、極端に劣っている。今回の応募では、精神障害者への社会復帰支援がかなり多く、民間先導でいい展開が期待できそうである。
4)国の少子化対策は、うまく成果があがっておらず、児童虐待が社会問題になっている。早急に、地域や社会全体の子育て支援が必要である。このような時代のニーズを察知した応募が多いことが印象に残った。


(8)大学社会人コースで学ぶ福祉関係の実践者

今回、コムケアセンター助成選考委員という大役を仰せつかり、本当に身震いするような気持ちで選考に参加させていただきました。実は当初はかなり気楽に考えていたのですが、約70の応募書類すなわち約70「自己主張」に目の前にしてまず面くらい、そしてそれらに目を通すうちにだんだんと冷や汗が出てきました。たった一枚の紙ではありますが、その紙面の中には皆さんの期待と熱意がつまっており、さらにそれが70もあったたからです。NPO等の関係者でもなんでもない私が、こんな大変なことを引き受けてしまってよかったのであろうかと少々後悔の念に駆られてしまいました。しかしながら、びびってばかりいるわけにもいかないので、こちらとしても皆さんの熱意に答えるべく真剣に審査に取り組んだ次第です。
さて、審査を終えていくつか気づいた点についてあげてみたいと思います。まずは応募書類選考についてですが、限られた紙面にて各々の団体の「自己主張」を表現するのは、本当に大変なことだったと思います。選考における情報は基本的に応募書類しかないわけですが、極力その文面から多くの情報を読みとる必要性があります。しかし、それぞれの団体のプレゼンやコンピュータのスキルの得手不得手があり、どこまでそれを意識すれば良いか悩みました。私の場合、選考基準「地域性」と「緊急性」の評価についてかなり苦労しました。また「地域性」について、どの程度の範囲(規模)をして地域社会に根ざしているか点についてかなり悩みました。選考書類では、それぞれの団体の拠点の地域特性が読みとれないこともありますが、逆にそれぞれの地域事情に関した活動を主張した応募も少なかったこともあります。また私見を述べさせてもらえば、全体的に地域性を重視した団体の応募は少なかったように感じました。またいくつか、その活動の社会的意義や科学的根拠に疑問を感じた団体がありました。この点については今後論議が必要かと思われます。
最後の私の考える今後ぜひとも応援していきたい活動について述べてみたいと思います。
残念ながら1次選考で選外となってしまった団体ですが、社会的弱者に対する権利擁護およびアドボカシー中心とした活動を神奈川県の湘南で行っている「湘南ふくしネットワークオンブズマン」というのがあります。とくに来年から社会福祉法の改正により障害者への対応が措置から措置費支給の変更になることに伴い、その活動の必要性は高まると思われます。また、環境問題に関した具体的活動を行う団体の応募が少なかったようですが、滋賀県の「滋賀県環境生協」のような単なる自分たちの住んでいる地域環境をあらゆる面から包括した団体の活動なども今後注目すべき活動だと思います。以上のようなサービス供給やニーズ充足のためばかりでなく、リスク対処のための活動を行っている団体の応募が増えると良いかなと思う次第です。


(9)大学関係者

多くの応募者が熱心で且つ自らの活動の意義を大切にされている事が伝わり、身の引き締まる思いでした。その一つ一つが意欲の現れであり、評価が軽軽に判断を下す事など出来ないものと思っています。とはいえ企画書の書き方として「惜しいな」と感じた事を大きく2点に絞って記します。
@ 総花的なプロジェクト;このプロジェクトを通して何をやりたいかと言う点について、「あれもこれも」という当事者の「想い」が強く出すぎたせいか、考えられる活動の全てを折り込んでしまう申請書が目に付きました。その意欲はとても良く分かるのですが、判断する側としては何を評価したら良いのかが散漫になり、結果として必ずしも高い評価は得られずに終わったものが多かったようです。これは実は表現方法の問題ではなく、申請すべきテーマや目的が明確に絞りきれていないために、つい想定されるもの全部投入してしまったという事ではないかと思います。小さくても良いから何をいつまでにどのような形で実現したいのか、そのためにどんな支援が欲しいのか・・・と言う明確なものが欲しかったと思います。
A 短期成果を意識し過ぎか?;多くの活動は恐らく今回のプログラムをクリアするかしないかに関係なく活動を継続して行かれるものと思います。そう言う観点から、今回の助成のためだけでなく、自らの活動の根底に流れている哲学をもっともっと熱く語って欲しかったと思います。その結果として、本プログラムで定義する「みんなが気持良く暮らせる社会の実現に向けて支え合う関係を作りだす」ことが見えてくるのではないかと思います。「コムケア」では恐らく短期的に応募されたかどうかではなく、末永いお付き合いの成果を期待していると思いますので。


(10)NPO法人研究者

ワクワクしながら審査表をめくり始めましたが、途中からその頁をめくる手が進まなくなり、自分なりの審査表を提出した今では、すっきりしない気持ちです。
まさに「甲乙つけがたい」という一言に尽きるのです。それは各企画がそれも遜色がないからでしょうか?それとも、それぞれに審査の物差しを私自身がもっていないからでしょうか?
昨年、最終審査会のプレゼンテーション審査に参加させていただいたときには、選考委員の方からはNPOのプレゼンテーション能力の不足が指摘されていましたが、一方で「人気投票ではなく、その事業の中身で評価されるべき。プレゼンを受ける側も力不足だ」という指摘もありました。私は後者の方に共感です。そうしてみると、実際に自分が審査のメンバーに参加させていただくことも複雑な心境ですが、私のような素人の意見も反映されるところが、このコムケアプログラムの大切な部分であるのでしょう。専門的な部分は選考委員にお任せするとして、私は素人感覚も忘れないように心がけました。このプログラムが目指す「大きな福祉」づくりは、NPOや専門家など一部の人のものではなく、立場を超えて、それぞれの持ち味を生かして沢山の人が参加するべきで、このコムケアのしくみは、そのことに具体的に挑戦しているのでしょう。そうして考えると役不足ながら、私が参加させて頂いたことも、あながち無意味ではなかったのかなと前向きに思うようにしています。そう割り切ったとしても、本当に助成の対象となるべき大切な事業を見落としてはいないか、判断を誤っていないだろうかと、やはり不安は止まないのですが。
何にしろ、誰が評価するのかということも含めて、基準・方法など助成選考にまつわる課題はこれまでは一部の世界で議論されてきましたが、これらを表に並べて、皆で議論できることに意義があるのだろうと思います。
また、この審査の結果によって助成を受けられた団体も受けられなかった団体の中にも、何かが生まれていることを期待します。結果に至るまでの経過が、何よりも大切だと確信しています。このプログラムを通して、コムケアというしくみが、助成対象になった団体が、対象にならなかった団体が、関わった私たち個人が、そこから何を生み出すのか、今後の展開に期待しています。