<コムケアフォーラム2003 in 東京 ワークショップ報告>

6月14日開催のコムケアフォーラム2003 in 東京でのワークショップの概要を、
それぞれのファシリテーターの方々から報告してもらいました。
それぞれがとても魅力的な内容です。


■ ワークショップ1「コミュニティ−を豊かにするために必要なこと」
ファシリテーター:安藤千賀さん(葛飾ケーブルテレビ)

 NPOの皆さんは活発に活動をしているのですが、資金面や地域への浸透という点で大きな壁にぶつかっているようです。コミュニティ−を豊かにするためには、地域の方の力がどうしても必要。その地域の方が気軽にNPOの輪にはいるにはどうしたらいいのかが、話し合いの一番の問題でした。

 解決策として、
  @ 分かりやすい活動テ−マの掲げ方
  A 地元メディアの活用(CATV/FM局)
  B 一つのテ−マに余り絞り込まない方がいいのではないか
 ということでした。

 そうした話を進める中、「事業としてのNPO」という話へ展開。
 NPOは組織であり「お客様」がいるものである。
 持続させていくには事業として存在しなくてはならない。
 なぜ、企業ではなくNPOなのか。
 社会のあり方とどう結びつけるのか、
 なんとも、答えのでない抽象的なものしか結論がでませんでした。

 私が感じたのは、
NPOには、地域型(地域を活性化させよう)とテ−マ型(例:環境問題を解決しよう)とそれぞれ独自でいのですが、大切なのは「強い志の明確さ」であると思います。

 そして、それぞれの志が明確であればあるだけ、そのNPOは、本音の議論が出来る。
 テ−マを分かりやすくすれば、そのテ−マに関心のある方が多く集まり、より深い議論ができてNPO自身も深みが生まれるのではと思いました。
 そうした、一つ一つのNPOを結びつけたら、政治家が行う日本再生よりももっと、大きなうねりとなり、豊かな日本になると確信したワ−クショップでした。

 最後にテレビに関る人間として、私自身がNPOをもっと勉強をし、視聴者とともに、
NPOの発展に追い風を吹かせるような番組を作らなければと思った次第です。


■ワークショップ2「NPOの悩みを解決しよう」
ファシリテーター:井上英之さん(ソーシャルベンチャー・パートナーズ)

 私たちのグループでは、時間のほとんどをゆっくりと、自己紹介をしていましたが、12名ほどの皆さんとても素敵で、ずいぶんと互いに学ぶことがありました。
 それぞれ活動をしている分野や地域が違えども、さまざまな課題が見えて、短い時間でしたが共有できたように思います。ここに簡単に報告をします。 

 ひとつめは、NPOをやっていくうえで独特の悩みです。活動を始めたものの、続けていくうちに、いろいろな関係者が増えてきます。そのときの会員制度や運営のあり方、「誰のためのNPOなのか」が常に問われるという問題です。
 例えば、ある参加者のNPOは、非常に活動はうまく行っていますが、逆に、急増した会員との関係が悩みとなっているそうです。組織が拡大すると、またそのスピードが速いほど、発足当初のやり方からの変更を迫られる場合があります。もっと管理を強めるべきなのか、ただ楽しくやっていたころの手作り感を大事にするのか?つまるところ、そのNPOは、誰のためにあるのか。意義のある広がりのある活動ほど、問われることになりそうです。

 同時に、他のテーマグループと共通する話題ですが、やはりどうやって経営をしていくか、特に収益をつくっていくのか、が悩みとして多くあがっています。活動の安定のためには、当然ながら、より安定した収益源が必要。企業との付き合いなどが必要になる場合もあります。また、収益事業をする場合、納期をきちんと守ったり、新たなルールも必要です。
そうした時、これまでの良さと、継続性や成果に対する厳しさの両立にも悩みますし、そもそも、直接の顧客があまりお金をもっていない場合の、事業の作り方も難題です。

 さらに、世代による収益事業に対する意識の違いもありそうです。大まかに言えば、若い世代ほど収益にこだわり、自分の時間に対してコスト意識がある一方、世代があがるほど収益には関心がない人も多い印象があり、実は自分自身が食べていく必要もあるのに困っている、という、NPOのリーダーの方のお話もありました。
 全般的に、まずはお互いの話をよく聞き、シェアしていったワークショップでしたが、非常に楽しく、そうそう!と頷くことの多い、実り多い時間になったと思います。


■ ワークショップ3:「個人としてNPOとどう関わるか」
ファシリテーター:飯沼勇一さん(株式会社アドエンジニアーズ)

 この簡単そうで難しいテーマには、最終的に12人が集まった。NPO初体験者が5人。コムケア応援団が3人。実際に活動に参加している人が3人。なかなか多彩なメンバーになった。
 簡単な自己紹介の後、テーマから少し離れるカタチで初体験者に焦点を定め、「NPOというものに対して、どんなイメージをお持ちなのか」聞いてみることにした。その結果判明したのは、NPOが理解されていない事実だった。
 初体験者の人たちは「ボランティアとNPOの違い」が知りたいらしい。しかし語源的な説明では埒があかない。仕組みの説明でもピンと来ない。だんだん定義付けのほうに話が進んで行き、そこで時間を取られてしまった。が、朧気ながら次の点が浮かび上がってきた。
  (1)NPOに参加するとどの位の給料がもらえるのか?メシは食えるのか?
  (2)どこへ行けばそうしたNPOに参加できるのか?情報の入手は?

 (1)に対しては「今一番大きな課題になっている問題で、事業型NPOに熱い視線が向けられているのはそれが理由。給料を払えているNPOも多い。ただし給料ありきの視点ではなく、自分が何をしたいか、を一番に考える必要がある。そうすれば自ずからボランティアとNPOの違いも見えてくるのではないか」などの意見が出され、何となく理解された感じ。
 (2)に関しては、「市役所などに問い合わせれば情報がつかめる」が、「NPOは基本的に情報発信が下手。市役所などに窓口の充実の要請を行うと同時に、NPO情報をとりまとめるためのNPOがあってもいいのでは」などの建設的な意見が出された。
 また、「いろいろ考えて止まっているよりまず動いてみて、そこからミッションを見つければいい」などのサジェッションも提供され、ヒントになったようだった。

 ファシリテーターの不手際で、「他のNPOはどう活動しているのか?自分のNPOとはどう違うのか?」などの情報収集を目指した人には、何とも物足りない70分になってしまった。この場を借りてお詫びしたい。だが、NPOの基本は「持ち寄り社会」だ。より多くの同志が集まることが肝要。その意味では、意義はあったのではないか。   

 最後にファシリテーターが感じた点を記しておきます。
  ●まだまだNPOの理解が浅いものであること。
   (たとえ実際に活動していても)
  ●理解を広める努力が行政側にもメディアにも市民にも欠けていること。
   (これについてはNPOをつなぐNPOも考慮する必要性。コムケアみたいに)
  ●NPOの活動そのものがやはりどうしても、近視眼になりがちなこと)
   (そのためには大同団結することが必要であること。コムケアの活動みたいに)


■ ワークショップ4「事業型NPOとこれからのビジネスのあり方」
ファシリテーター:宮田穣さん(ベネッセコーポレーション)

 参加者は、大学生、企業関係者、NPO主催者や関係者、経営コンサルタント、行政関係者などさまざまな12名。自己紹介を兼ねてそれぞれのNPOへの関心をお聞きしたところ、「NPOを新しい生き方として期待」「地域との関わりを深める役割としてNPOに期待」「NPOを立ち上げたい」「事業として成立するNPOへ」「NPO運営の悩み」など、その関わりに応じた幅広い視点が出されました。

 ワークショップは、NPOに関わっている参加者の悩みを中心に議論が進行。「NPOを立ち上げ活動が広がっていくに従って、自己負担が重くなってしまう」「家賃や仲間との関係が大変」といった具体的なものでした。
 参加者からは、企業経営と同様マネジメント、リーダーシップが鍵だという意見。しかしながら、NPOでの仲間との関係は企業ほど簡単にいかない。権限やお金で割り切れないところにNPOの良さと難しさがあると反論。たしかに運営資金の課題よりも、資金を得た後の日常的な運営では人間関係が大きな課題といえます。
 ニューヨークでNPOに関わっていた参加者からは、NPOメンバーとして一緒に活動する場合、最初にしっかりと関わり方の「契約」を交わすこと。また企業とパートナーシップを組む場合は、目的となる「共通の問題解決」に対する認識を明確にし、同じテーブルにつくことに力点をおくという指摘がありました。アメリカでも、必ずしも契約どおりにいくとは限らないようですが、取り組む姿勢や曖昧な関係にしない工夫として参加者の共感が得られました。

 NPO運営については、良い意味でいかにリーダーシップを発揮できるかが重要。しかし現実の中では、リーダーの属人的部分によるところがまだまだ大きいようです。企業などで取り組まれる「プロジェクトマネジメント」のやり方がイメージとして参考になるかもしれないという意見もありました。
 事業型NPOに踏み込んだ議論はできませんでしたが、NPOにとって社会的なミッションと同様に「良い仲間・楽しい仕事・良い成果」を維持し続けていくことの大切さを改めて確認できたワークショップでした。


■ワークショップ5「事業型NPOとこれからのビジネスのあり方」
瀬谷重信さん(コラボレーション経営研究所)

オープン参加型のワークショップにどれほどのメンバーが参加するか、興味と不安でスタートした。本テーマで4グループもできたことは「事業型NPO」への関心の高さを示すものである。
私たちのグループメンバーは12名。その構成は、現在NPOの運営に携わっている、NPO設立を計画している、企業の立場からNPOとの関係を考えていきたい、介護情報誌の立場からNPOに関心を持つ、それにNPOの成長に期待する学生の立場など多様な方々の参加を得た。
冒頭、進行役の立場からこのワークショップを3の"場"「メンバーの交流の場」、「それぞれ異なるバックグラウンドでの意見交換のプロセスを通して刺激しあう場」そして、「今回のつながりをもとに展開していくスタートの場」にしたいとの位置付けを理解してもらった。
自己紹介を兼ねて各メンバーのNPOとのかかわり、期待さらに今後の展開について自由に意見を出し合った。
「福祉型NPO」といえる高齢者、障害者の介護や支援に関わるNPOの運営はいずれも経済的な面で恵まれているわけではない。現実は主婦や50歳以上のボランティアに支えられ、助成金で運営されている。一方、会員の知識、経験を活かして情報技術の普及を通して社会活動を展開しているNPO(「IT型NPO」といえる)は、PC教室や自治体への企画提案などにより会員のネットワークを広げ活動基盤を固めているNPOもある。
いずれも、サービス対象分野は異にしても「NPOの本質は経済的にも自立し、持続的な成長の出来る基盤を持つこと」との強い想いが共通の認識となっている。この考えは「事業型NPO」の根幹であり、それをどのような視点で、具体的な実行プログラムを策定、実践するかが課題である。企業が有する経営資源や提供しているービスをNPOと関係を持って活かしあうことは相乗効果も生まれるであろう。
参加者からは、「インターネットの上で運営されているコミュニティとNPOとのコラボレーションの可能性は大きい」、また、「企業の社会的活動業務をNPOとして独立させているが、これは現実的な自立へのモデルになる」などの具体的提起がなされた。
さらに、今後のNPO(あえて事業型と限定する必要は無い)の自立の方向性についても意見交換から、次のようなことも浮き彫りになった。
・NPOには社会ニーズの開発が求められる
 「地産地消」の発想で地域ニーズを掘り起こしコミュニティビジネスで自立基盤を確保すべきである。企業には出来ないNPOの役割、存在価値がここにある。
・NPOは「場」として機能する
 多様な経験、スキル、ノウハウを有する人達が共通の目標のもとにプロジェクトチームを作り、自分を活かしながら企画、提案、問題解決をして行く「場」がNPOである。

短時間の意見交換ではあったが、皆さんのNPOの自立への熱い想いをお互いに感じあい共有できたこと思います、ご参加の皆さんに感謝します


■ ワークショップ6「事業型NPOとこれからのビジネスのあり方」
ファシリテーター:鈴木政孝さん(NPOイーエルダー)

 8名7団体の参加。途中から、産経新聞の大串部長が参加。参加者一人ひとりに次の3つのテーマに絞って発言していただくことをお願いした。実際には、2のテーマまでで、3は、ファシリテーターの意見に対し、参加者が意見を述べるスタイルとなった。
 1.事業型NPOの具体的ないイーメージ、
 2.事業型NPOの推進に伴う課題・問題点、
 3.課題・問題点の解決策の討議

 最初のテーマは、参加者7名。学生さんが1人、NPOの勉強中が1人、これからNPOの設立準備が2人、「NPOと聞くと頼りない」とのイメージを持つコンサルタント、事業型NPOの台頭に期待しつつ現状のレベルは厳しいと指摘する地方自治体の役人、一人NPO活動を立ち上げたが、このままでは、立ち行かなくなる。何とか事業型NPOに移行したいと実践中のNPO代表。

 第2のテーマに入った途端、「事業型NPOと企業とどう違うのか」との緊急質問が出て、時間を取られた。途中で、ファシリテーターの権限で、この議論を中止した。

 本来のテーマである課題・問題点は、次のような指摘があった。
  ・資金が集まらない
  ・過度に代表者に責任が集中して、身も心も疲れ果て、事業の継続が困難
  ・会員の資金・何をやるか・どのようにやるか等にバラツキがあり、意見が纏まらない
  ・経営者が人格者でないとNPOは存続できないのではないか
  ・発注側から言わせていただくと、マネジメントが頼りない

 第3のテーマ「課題・問題点の解決策」については、ファシリテーターの独断と偏見で、 
  ・社会的使命=事業内容は明確か
  ・代表や理事などの役員の情熱だけでは、十分でない
  ・NPOに、事業分野や地域の専門知識、創造力、アイデアなどがあるか
  ・事業分野や地域のニーズに合った戦略性のある「事業計画」を立てているか。NPOの製品やサービスに対して自分だ   ったらいくらで購入するか、寄付する気になるか
  ・NPOのサービスをボランティア活動と勘違いしていないか。NPOはボランティアを活用してサービスを行っても、サービ   ス料金を請求すべきである
  ・専任の営業推進者を確保する(必ず、成果は出る)
  ・企業とそんなに違わない。利益を配当に回さないだけである
 以上について、説明した。

 残念ながら、途中の時間のロスと時間的制約もあり、深い議論にならず。事業型NPOの道遠しとの感。
 ただし、若い地方自治体の役人が事業型NPOの台頭を待ち望んでいることを知った。政策提言型、事業型、コミュニテイビジネス型、アイデア型などのNPOがどんどん出てくることを願わずにはいられない。


■ ワークショップ7「「事業型NPOとこれからのビジネスのあり方」
ファシリテーター:新谷大輔さん(三井物産戦略研究所)

 企業とNPOの対話の場は非常に少ない。そのため、企業側にもNPO側にも相互に誤解している部分がある。最近でこそ、企業OBがNPOセクターに入るケースが増えているため、企業の体質を理解しているNPOも増えてはいるものの、企業側がNPOとの積極的な対話を進めるケースは少ない。未だ社会貢献の枠を出ない、というのが現状である。
 
  そのような状況において、今回のワークショップは面白い試みであった。というのは、企業とNPOの協働フォーラムというようなイベントが日本NPOセンターなどが企画し実施されているが、そうしたフォーラムに参加するNPOは中間支援型が多いのに比し、本ワークショップは佐藤さんのコムケアでの活動をベースにしているたけに、様々な具体的なフィールドでの活動をしているNPOが中心に集まっていた点である。そこに企業人の参加者が入り、様々な対話が行われたのは非常に意味があったのではないだろうか。企業人がNPOの具体的な活動に触れ、NPOが企業人の考えに直接触れる。これは両者の関係を深める第一歩なのではないだろうか。

  実際の当分科会では様々なバックグラウンドを持った方がテーブルにつかれ、実際にNPOにおいて活動をされている方、企業に属している方、学生など、そしてNPOとの関わり方も既に関わっている方もいれば、これから勉強したいという方もおられた。議論の中からは様々な意見が出されたが、

@ NPO≠ボランティア NPOは組織体、事業をやる
 ⇒とはいえ、一般の市民への理解浸透度はまだ低い。株式会社とNPOの間でその持たれているイメージ格差が大き過ぎる。株式会社もNPOも利益を配分するかしないかだけの違いで、さほど変わりはない。NPOは社会的ミッションが第一であり、その実現のために事業を行うだけのことである。
A NPOは資金問題を抱える ⇒ゆえに人材も雇用出来ず、人材不足に陥る
B なぜ、NPOという選択肢を選んだのか
C どうやって事業収入を得るのか
D 既存のリソース(地元のものなど)をどう組み合わせるのか
といった議論が交わされた。

  NPOは社会の期待が高まれば高まるほど、求められる内容は高度になり、今後、事業を行いながら活動資金を得ていく必要は益々高まってくるだろう。そうした中で、企業とのどのような関係を構築することが必要なのか。
  企業とNPOが組織同士ではなく、こうした個人同士の対話を続けていく中で新たな関係性が生まれてくると期待すると同時に、弊方もまた以前からやっている「企業とNPOの対話ワークショップ」を続けていかなければならないと心に誓う次第である。